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EU の緊縮財政への方向:主要国の事例 [Social Policy]

前のブログ『福祉国家と』と『福祉社会』で,日本の社会保障改革についてかなり厳しい見解を披瀝しましたが,200%に近い対GDP比の財政赤字を抱えた日本には,もはや厳しい財政削減以外には,世界で生き残るチャンスはないと考えるからです.

日本の国債はその95%を日本国民が保有しているから売り叩かれる心配はないとタカを括っているようですが,せっかく回復の兆しが見え始めた日本経済が,アフリカ情勢を繁栄した急速な原油高の進行で,回復への道を再び押さえ込まれれば,これ以上そうした外圧をはね返す力は日本には残っていないのではないでしょうか.                                          そして日本国債の格付けがさらに引き下げられる事態になれば,日本国債は市場で暴落し日本はギリシャの破綻を上回るどん底に落ち,IMF の厳しい管理下に置かれるしか選択の余地はないでしょう. 

ギリシャの国家財政破綻に始まって,スペインポルトガルアイルランドなどに波及したEU諸国の経済危機は,EUがかなり厳しい財政規律を規定したことによる部分も大きいのですが,国際化を推進して出来た組織,EU所属国には自ら厳しい財政規律を守る義務があります.そして財政規律を守ろうとすると,ターゲットは Social Spending に向けられます.          

それは日本のカラ管政権がのんびりと無責任に税収を上回る国債発行を予算化し,その予算を通さないのは国民生活をナイガシロにするものだと居丈高に開き直っている愚かさとは比べ物にならないモノです.

以下に,いくつかの国に絞って2011年に向けた歳出カットの情況をイギリスBBCの原文のまま列挙しますから,その厳しい方向性をぜひご理解下さい.

UK

The Conservative-Liberal Democrat coalition government has announced the biggest cuts in state spending since World War II.

Savings believed to amount to about £83bn (95bn euros, $131bn) are due to be made over four years.

The Chancellor, George Osborne, told parliament that 490,000 public sector jobs would be cut over four years because the country had "run out of money". Experts predict a similar number of job losses in the private sector.

Most Whitehall departments face budget cuts of 19% on average while the defence budget will be cut by 8%. The retirement age is to rise from 65 to 66 by 2020.

Some incapacity benefits will be time-limited and other money will be clawed back through changes to tax credits and housing benefit. A new bank levy will also be brought in.

While there was no widespread industrial unrest ahead of the cuts' announcement, the general secretary of trade union Unison, Dave Prentis, accused the government of "taking a chainsaw" to public services for ideological reasons. The opposition Labour Party accused the government of a "slash and burn" policy.

Despite the austerity drive the UK plans to lend about £7bn to the Irish Republic. The government argues that the Irish economy is too important to UK business for it to be left in dire straits.

FRANCE

France has announced plans to cut spending by 45bn euros (£39bn) over the next three years in order to meet the budget deficit target.

Some of this money is expected to be saved through closing tax loopholes and withdrawing temporary economic stimulus measures.

President Nicolas Sarkozy's plans to raise the retirement age from 60 to 62 and the full state pension age from 65 to 67 provoked major protests and strikes.

The demonstrations regularly attracted more than a million people on to the streets. French riot police were brought in to reopen fuel depots blocked by protesters, although the demonstrations have been largely peaceful.

The government pressed on and the measures have now been approved by parliament.

As an additional austerity measure, the highest earners will also be required to pay an extra 1% income tax.

GERMANY

The German government has proposed plans to cut the budget deficit by a record 80bn euros, or 3% of GDP, by 2014.

The total deficit in 2009 was 3.1%, but is projected to grow to more than 5% this year.

"Germany has an outstanding chance to set a good example," said German Chancellor Angela Merkel.

The plans include a cut in subsidies to parents, 10,000 government job cuts over four years, and higher taxes on nuclear power. The rebuilding of the baroque Stadtschloss palace in the heart of Berlin will also be postponed.


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緊急援助隊派遣に後れを取った日本 [Social Policy]

ニュージーランドの大震災被害に対して,日本はまず調査団3人を派遣しましたが,これだけ情報の国際化が進んだなかで,地震大国で地震災害に経験のある日本が,何故,直ぐに緊急援助隊を派遣しなかったのでしょうか.

最近は北アフリカ情勢への関心もあって,深夜までBBC News を視聴しているのですが,まずオーストラリアの援助隊が間髪を入れずに入り,次にアメリカの援助隊,そしてかなり遅れて,中国,韓国と日本の緊急援助隊がほぼ同時にクライストチャーチに入ったというのが実情だったようです.イギリスの緊急援助隊は,距離的な関係でさらに遅れました.

今や世界の2流国に転落した日本ですが,そこまで2流国に甘んずることはないでしょう.            新聞報道では,カラ菅さんが小澤元代表の処分問題の会合に出ていて遅れたと書かれていますが,事実だとしたらその政治感覚欠如を強く非難したいと思います.


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『福祉国家』と『福祉社会』②社会保障制度 [Social Policy]

前回は,日本の社会保障制度が,年金保険医療保険を問わず,職域別,地域別さらには年齢別に複数以上に分断されて,一方に50%超の国庫負担金を取り入れた制度がありながら,他方にはまったく国庫負担金が入らない制度があるなど,複雑で分かりにくくなった制度間で,不公正,不平等が拡大し,社会的連帯の理念が希薄化されてきたことを概観しました.

1.改革提案

私の制度改正案としては,次の抜本改正を提案します.                            消費増税を招かないことを念頭に,融通無碍に国民年金と国民健康保険にのみ不公正に注入されてきた国庫負担金は原則ゼロとすることから改正を考えるモノとします.

(1)年金制度は職域別と地域別に2元化して,制度を簡素化します.そして世代間の公正を損なってきたのを改めるには,世代間の分配をやめ,従来の世代間の賦課方式(確定給付方式はスライド制を賃金から物価に改めた時点で変貌)を個人別の積立方式(確定拠出方式)に改めることが検討に値するでしょう.それは決して職域別,地域別の制度間格差の解消に即結びつく保障はありませんが,それはむしろ経済産業面の善政に待つしかないでしょう.因みに主婦は地域別に分類されます.

最近問題化した主婦の無年金化問題は,職域別年金が主婦についてのみ世帯単位,地域別年金がすべて個人単位という,保険料徴収の便宜を重視した供給者本位の制度が生み出した不公正の結果というべきで,地域別年金への不公正な国庫負担注入にもかかわらず,保険料徴収率が必ずしもあがらないという制度矛盾と重なる問題の側面を持っています.主婦にだけ遡及して地域別制度の保険料支払いを認めれば,かえって地域別保険の公正を損ないかねないのです.

話を将来の問題に戻しますと,それぞれ個々の年金額はアリさんとキリギリスさんのように積立額と各自の運用実績次第ですから,別に最低年金を提案する積もりはありません.最低生活の保障は大改正されるべき社会扶助制度に委ねるべきモノと考えます.                                            制度的には,いわゆるStakeholder pension への移行を求めるモノです.

(2)医療保険(無理に分離した介護保険は医療保険に一本化)については,年齢別の区分を廃止して,やはり職域保険と地域保険(家族単位)に大きく2元化する方向が選択肢として挙げられます.地域保険への無定見な租税注入廃止を前提しますから,その給付水準が低水準になり給付格差を生ずる可能性は,経済産業政策にその是正を委ねるしかないでしょう.

残る問題は,(1)について,賦課方式から積立方式に組み替える過渡期に,現役世代が自分のための積立と,現在の年金受給者のための賦課の両方の負担に耐えられるか否かが大きな課題として残ります.賦課部分は国債発行に依存するとしても,日本の現役世代には既に途方もない無責任な借金の積み回しが待っていますから,そこに生ずる無理な部分は,今のうちなら未だ沈みかかった日本にも来てくれそうな海外からの優秀な人材を大量招聘することによって,出来る限り世代間のバランスの改善を図ることを提案します.                                        彼等移住者の貢献で日本の経済成長率が失われた20年を抜けて高まると期待するもので,年金保険,医療保険の負担ベース拡大を期待するモノです.なによりも,年金保険問題,医療保険問題の解決には経済の高度成長が最良の妙薬と考えるからです.

医療保険については,まず職域保険,地域保険に制度を2元化し.看護介護を含む医療人材の海外からの導入を進め,かつ混合診療を解禁し,その半面で,医療従事者,特に医師の今は高過ぎる所得是正を含めて,医療保険で賄う範囲を保険財政的に抑制することを提案したいと思います.                                                     私は日本の社会福祉,社会保障は,供給者本位であり過ぎてきたと考えるものですから,そこを思い切って脱却し,受給者本位に是正できれば,医療保険の守備範囲は限りなく現状維持に近づけられると考えます.
職域保険と地域保険の予想される格差は,前述の経済産業政策に委ねて,縮小を期待したいと思います.

繰り返しますが,日本の本格的な経済成長は社会保障制度改革の最高の良薬ですから,安易な「税と社会保障の一体改革」は棚上げして,経済成長に最大の努力を傾注すべきです.成長なくして社会保障を充実しようとすれば,簡単に消費税増税に結びつけられてしまうことを銘記すべきです. 

改めて,『福祉国家』の将来は『福祉社会』の新たでさらなる内部充実にかかっていると考えるモノです.それなくしては,福祉国家の再生はほとんど不可能でしょう.それには日本「福祉国家」の将来像を,上述のように抜本的に簡素化した制度として,分りやすく夢を描いて見せることから人心を呼び戻すことを,心から期待するものです.

カラ菅さんや人格に疑問を持たれる与謝野さん等に期待するところは,何もありません.

                                              


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『福祉国家』と『福祉社会』①社会保障制度 [Social Policy]

これは,William A. Robson 教授(1895~1980)の”Welfare State and Welfare Society"(1976年刊,まとまった著作としては教授の最後のモノ)を,私の恩師であった故辻清明教授のお手伝いで共訳した際に,訳書の最終的なタイトルとして熟慮の末に素直に「直訳」を選んだモノで,日本で「福祉社会」という言葉を広めるキッカケとなったものです.

これはたいへんな名著ですし,辻清明先生に手を加えていただいて,名訳になっていて,21世紀にもきわめて現代的な先見性を含蓄した書物ですから,皆さんにも広くお読み戴きたいモノです.東大出版会から出ています.

1.序論                                                             私は社会保障のそもそもを説き起こす時に,イソップ物語の「アリとキリギリス」の話を少し修正して説き起こすことにしていました.                                         イソップ物語では,夏の間せっせと働いて冬に備えてエサを集めたアリさんに対して,カラオケにばかり入り浸っていたキリギリスさんは,冬になるとエサが無くなって困窮してしまういうのですが,そこを情緒的に組み替えて,仕方なくアリさんにお願いしてエサを分けて貰うと考えます.

そこへ知恵者が現われて,社会保障制度を作るとどうなるでしょうか.社会保障制度はキリギリスさんにも夏働いて保険料を積み立てさせることになります.客観的に見るとキリギリスさんは貯蓄を強制されることになるのです.そこに成立する社会保障制度は,それでは,いったい誰のための制度なのでしょう.

昔からせっせと働いて貯蓄に努めていたアリさんは,自分の努力の成果の大半をそのまま自分や子孫のために使えるようになりますから,社会保障はアリさんのための制度といえます.            他方,キリギリスさんもアリさんに頭を下げてエサを分けて貰う必要が無くなり,強制貯蓄+一部アリさんの努力のオコボレにも預かれますから,キリギリスさんのための制度ともいえます.

しかし,限定を付けますと,これは福祉国家が福祉社会と両立している場合の話ということになります.

もし誰かが福祉国家では「いつでも誰でも何処でも」給付が受けられると聞いてきて,みんなに言いふらしたらどうなるでしょう.強制貯蓄の仕組みの社会保険料は,払わなくてもいいじゃないかと言い出す人が一挙に増大するかもしれません.                                       そういえば生活保護制度という租税による制度があって,生活に困ったらそれを貰えばいいんだから,社会保険料なんかヤーメた,とみんなが言い出したらどうなるででしょう.
現実に国民年金の支払い率の低さ,さらに国民健康保険料の収納率の低さ,保育所の入所費用の不払い,学校給食費の不払いなど,不払いが増加していますが,「いつでも誰でも何処でも」という社会福祉のスローガンがもたらした側面,全ては福祉国家の責任という発想の責任は,決して小さくはないでしょう.

これはロブソン教授が指摘する「福祉社会になろうとしないで,福祉国家を批判する」愚の典型例でしょう.ちなみに福祉国家は国民が政治を通して形成するモノですが,福祉社会は,長年にわたって醸成されるもので,一朝一夕に作られるモノではないのです.しかし,壊れるのは何かのキッカケで簡単に壊れてしまうモノです.                                         日本の社会福祉系学者のなかには,福祉国家はいきづまりそうだから,これからは福祉社会を構築しようという議論がありますが,それは言葉のオリジナルな意味を取り違えた議論でしかありません.                              

2.分裂した継ぎ接ぎ制度の難点                                      ここでいい加減な形で出来た日本の制度の問題点を挙げてみましょう.
まず最初は軍人,国家公務員の恩給制度でした.これが最初に出来ましたから,あとは継ぎ接ぎで,軍人と同程度の危険にさらされた船員保険が続き,それに続いて地方公務員,公立学校,私立学校等が共済組合制度を作りました.残った民間企業は,中,大企業のための厚生年金制度ができました.当時のいわゆる現業の国鉄や電信電話,専売関係は,恩給制度を支えていました.                                                     弱小なところは抱え込まず,職業別,企業規模別に制度が作られたのです.大企業の中には,独自の恩典を入れて,組合制度を取りました.                                   つまり社会保障の背景にある筈の『社会的連帯』の理念はもともと希薄だったのです.

そこでは置いてきぼりになっていた第1次産業の農村,漁村,山村の農業,漁業,林業人口,第2次産業のサービス業で厚生年金に入れなかった人達は,一纏めにして国民年金制度に強制加入となりました.その場合,共済組合や厚生年金など,雇用主が保険料負担をする例に倣って,国が1/2負担する形を取りました.保険料と租税のないまぜが,初めから入ってしまったのです.

これとほぼ同じ分裂状態で,健康保険制度が重なって制度化されました.ただ,この場合には,大中小企業向けの健康保険に入れない自営業者中心に,市町村単位に国民健康保険制度が制度化され,25年以上保険料を掛けてないと支払われない国民年金制度とは異なって,毎月月単位に医療費を医療者に支払わないといけませんから,全都道府県に医療費支払基金が作られました.

ここで,私がわが国の社会保障,社会福祉は供給者本位に作られていると繰り返しているひとつの明らかな事例が出来ました.それは,東京都23区の医師会が集まって,千代田,中央,港など企業が集中して裕福な区と,足立,荒川,江戸川など未だ農村的な区との間の所得格差を取り上げて,東京都がどこの区も赤字を出させないと約束させ,そのため,23区をまとめた一部事務組合制度を作らせたことです.

国民健康保険は初めはすべて保険料で賄われるはずでしたが,次第に,国民健康保険に租税が導入され,その比率は短期間に50%を超えるところまで行き着いてしまいました.                    要するに,わが国の社会保険はごく初期から社会的不公正を孕んだ制度としてしか存立し得なかったのです.

わが国は職域,地域の縦割り区分に加えて,まず老人医療を医療保険の枠を外して別枠で無料化しました.そこまでは医療保険制度の基本枠は維持されたのですが,介護保険制度,後期高齢者医療制度の別枠化では,制度に明確な年齢別横割り制度を導入したのです. 
そこまで分離,分断して制度を作ると,さまざまな不公平,不公正が重なって制度の矛盾は次第に拡大します.特に,制度別保険料に占める国庫負担額の差違,制度間格差は,見逃し難い不公正です.また,これだけ制度分割を重ねれば『社会的連帯』の理念など曖昧になり希薄化せざるを得ないでしょう.

分裂した継ぎ接ぎ制度の難点など仕方がないではないかという反論があるかも知れません.しかし,世界的には,医療(日本が社会保険制度の故に無理に分離した介護を内包する)を国営,公営化している福祉国家が少なくないことと対比すれば,わが国が独自に作り出した分離分割制度は最大の欠陥制度というべきでしょう.

この辺で『福祉国家』と『福祉社会』②に続けます.

 

                                            

 

 


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意味誤訳だらけの日本の社会福祉 [Social Policy]

「いつでも誰でも何処でも」は Universalism vs Selectivism が意味誤訳された典型例です.

そもそも Universalism vs. Selectivism は,貧困対策のあり方として,政策が貧困者にselective に選別的に行われると,stigma 意識が強く表れて,その政策が意図した対象者のうち多くの人が受給資格がありながら受けようとしない事例が少なからず残るという調査結果がいくつも示されて,それではUniversal で普遍的な施策はないだろうかという議論から生まれた概念です.

つまり社会福祉政策のターゲット,対象者は貧困者と特定して,貧困問題に対する政策手段について Universalism vs Selectivism の選択が議論されたということです.

具体的にいえば,そこで Universalism として主張されたのは,自由主義経済学者として有名だった Milton Friedman が主張,提示した Negative Income Tax だったのです.            私がアメリカ留学中だったヴェトナム戦争の最中に,Nixon 大統領が提起した Welfare reform はこのNegative Income Tax の考え方に沿ったものだったのですが,アメリカが戦争の前面に出て軍事費が拡大する中で,貧困からの脱却を促すためには Negative Income Tax の税率は高くすべきだとする議論と,財政制約からその税率は低くすべきだとする議論が対立し,進歩派と保守派の狭間で Welfare reform は,結局,成立しなかったという経緯があります.

イギリスでも,Negative Income Tax への一本化が模索されたのですが,結局,所得税制というUniversal な政策との一本化は難しいということで,同程度にUniversal な年金制度への一元化を図って成立したのが,National Assistance から Supplementary Benefits への大改革だったのです.

つまり『政策手段』の選択肢として論争された Universalism vs Selectivism が,いつの間にか政策対象が広いか狭いかの議論にすり替わってしまって,「いつでも誰でも何処でも」という,およそ想像も出来ないモノにすり替わって誤訳化されてしまったのです.
当時の日本では"Japan as No.1" に浮かれて,バブル経済のなかで,日本の社会福祉,社会福祉学者もバブルに浮かれていたというべきなのでしょう.

少しまともな学者なら,まるで落語の「花見酒」のような議論が成り立たないことは,火を見るより明らかなことだったのでしょうが,それが厚生官僚の『厚生白書』にまで取り入れられて,広く人口に膾炙してしまったのです.

わが国の「貧困対策」が,戦後一度もまともに改革論議されてこなかったのは,まさにこの社会福祉学の一大誤訳,一大誤謬の結果と言うべきで,フィリピン以外には世界に例を見ない社会福祉士,介護福祉士制度を創設してそうすれば問題が解決するかのような錯覚に陥らせた社会福祉学には,改めて猛省を促したいと思います.

日本のSocial Policy は,改めて Need と Means の意義を深く掘り下げて議論すべきだと考えるモノです.                                                             今のままだと,生活保護は,「税と社会保障の一体改革」からも取り残されてしまうのではないかと懸念します.

 


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「いつでも誰でも何処でも」でなく貧困対策を [Social Policy]

私は,わが国の社会福祉学は国際標準化から外れた異常な学問分野だと論じましたが,カラ管政権が「税と社会保障の一体改革」を唱える無神経さは,背景として日本の社会福祉学の能天気な議論「いつでも誰でも何処でも」が生み出したともいえるでしょう. 
「誰でも何処でも」の裏付けとして,自由権規定である日本国憲法第13条を援用して憚らなかった社会保障法学者がいたことも忘れられません.

私は「いつでも誰でも何処でも」という世界に類例を見ない虚構の発想を前提した「税と社会保障の一体改革」の前に,明確な「貧困対策」を打ち出すべきだ考えるモノです.

アメリカは福祉国家以前のように論じられる場合が多いのですが,貧困家庭の児童が貧困を再生産することにならないようにしようとする Positive Discrimination or Affirmative Action Programs は,1960年代初めのアメリカにおける『貧困の再発見』(Michael Harrington の”The Other America"がその象徴,イギリスではPeter Townsend & Brian Abel-Smithの"The Poor and the Poorest"が象徴的)を受けて,実に1965年に貧困家庭,貧困地域を対象に始められたHead Start Program(early education と child care のミックス)は,未だに続いている長寿プログラムです.                                        これがなかったら,AFDC→→TANFへの改正で,母子家庭の社会扶助に2年間という期限を設定するというようなことはなかったでしょう.

                                                         HEAD START ENROLLMENT HISTORY

FISCAL YEAR
ENROLLMENT
APPROPRIATION
1965 (summer only)
561,000
$ 96,400,000
1966
733,000
198,900,000
1967
681,400
349,200,000
1968
693,900
316,200,000
1969
663,600
333,900,000
1970
477,400
325,700,000
1971
397,500
360,000,000
1972
379,000
376,300,000
1973
379,000
400,700,000
1974
352,800
403,900,000
1975
349,000
403,900,000
1976
349,000
441,000,000
1977
333,000
475,000,000
1978
391,400
625,000,000
1979
387,500
680,000,000
1980
376,300
735,000,000
1981
387,300
818,700,000
1982
395,800
911,700,000
1983
414,950
912,000,000
1984
442,140
995,750,000
1985
452,080
1,075,059,000
1986
451,732
1,040,315,000
1987
446,523
1,130,542,000
1988
448,464
1,206,324,000
1989
450,970
1,235,000,000
1990
540,930
1,552,000,000
1991
583,471
1,951,800,000
1992
621,078
2,201,800,000
1993
713,903
2,776,286,000
1994
740,493
3,325,728,000
1995
750,696
3,534,128,000
1996
752,077
3,569,329,000
1997
793,809
3,980,546,000
1998
822,316
4,347,433,000
1999
826,016
4,658,151,448
2000
857,664
5,267,000,000
2001
905,235
6,200,000,000
2002
912,345
6,536,570,000
2003
909,608
6,667,533,000
2004
905,851
6,774,848,000
2005
906,993
6,843,114,000
2006
909,201
6,872,062,000
2007
908,412
6,887,896,000

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The Head Start program has enrolled more than 25 million children since it began in 1965.

同様のProgram は,幸い Universality という概念を持たないオーストラリアで,かなり早くから導入されており,Canada でも見ることが出来ます.またイギリスでは労働党の「第3の道」政策の一環として,1998年に Sure Start Programme として導入されますが,国の直接行政が必ずしも成功せず,その後,2003年から地方主体のChildren's Centres に shift して,成長しつつあります. 

いずれも貧困家庭の児童をターゲットにして,母親の就労促進と併せて,貧困家庭の貧困再生産の糸を断ち切ろうとするモノです.                                                                    参考までに,OECD 推計(Data extracted on 11 Feb 2011 12:47 UTC (GMT) from OECD.Stat で,(1)平均可処分所得(千ドル),(2)Children in Poor Homes(%) の数字をいくつかの国について抜粋しますと,
                    (1)     (2)   
Australia             20.8   11.8
Canada               25.6   15.1  
Germany             19.9   16.3
France               19.0     7.6  
Japan                 22.5   13.8
Sweden              19.9     4.0   
United Kingdom    22.7   10.1  
United States      29.2   20.2 
OECD average     19.2   12.4

となっています.

前に書いたブログで指摘したように,わが国における「幼保一元化」が1950年代に挫折した不見識な日本の社会福祉学,児童福祉学からは,こうした「貧困家庭」「貧困児童」への政策は生まれようがないかも知れませんが.....

私は「福祉国家の中流階層化」と日本の「供給者本位の社会福祉」を実証的に論じてきたものですが,そうしたなかで積極的「貧困対策」Positive Discrimination はなかなか取り上げられようがないでしょうね.....

しかし,日本の「貧困」問題は,「税と社会保障の一体改革」の大前提として議論しなくてはならない重要課題の筈だと考えるものです.

政治生活の最後のチャンスとして政権に近づいた古狸の与謝野大臣に,そうした見識があるとはまったく思えないことは,まことに残念なことですが.....

最後に,日本の所得再分配政策についての批判を引用しておきます.これは「いつでも誰でも何処でも」に飛びついた日本の社会福祉学が犯した一大過誤以外の何モノでもありません

日本の財政問題は、再分配政策の歪みの反映でもある日本の再分配政策は、都市から地方へ、若年層から高齢者へという流れが中心であり、高所得者層から低所得者層へという、本来もっとも重要な視点に欠けていると言われる。2009 年の経済財政白書でも、再分配政策の前後で不平等度が改善するのは高齢者層だけで、若中年層ではほとんど改善が見られないという試算結果が示されていた。」(明治安田生命;経済ウオッチ 2011 年2 月 第2 週号)

 


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薄氷のthe Affordable Care Act(Obama 医療保険法) [Social Policy]

2月3日のWashington Post によりますと,Obama 大統領の最大の選挙公約の1つであり,せっかく成立したthe Affordable Care Act の廃止案が共和党から提案されていたのですが,上院で a 51-47 vote で否決されたそうです. 民主・共和両党の議席数を反映した結果でしたが,これによって,Health Care が再び来年の大統領選の争点の1つになることが決定的になったといえます.

これは,昨年の中間選挙で,下院は全員改選でしたが,上院は1/3改選でしたから,下院は共和党が多数派,上院は辛うじて民主党が多数を維持したねじれ現象の結果ですから,来年の選挙では,ひょっとしたら上院,下院とも共和党が多数派になるかも知れないのです.

他方では,the Affordable Care Act を巡っては,違憲訴訟がアメリカ全土でおよそ20件提起されていて,最近,相次いで,きちんとした判決文40~70ページという内容ある判決文で,1人の判事はこの法律自体が違憲と判断し,もう1人は一部を違憲と判断したと言うことがあります.

Federal District Court Judge Roger Vinson, a Reagan appointee, ruled that the entire health care reform law passed by Democrats last year is unconstitutional.  The ruling is the strongest judicial setback yet for the Affordable Care Act passed by Congress last March and signed into law by the President.  

これは,この法律全体が違憲とする初めての判決ですが,この判決文は司法界で評価されていますから,いずれにしても,最終判断は連邦最高裁まで行くでしょうが,今の情勢では,9人の最高裁判事の内賛否の明確なのは4対4 で,結論はKennedy 判事にかかっていると言われています. 
                                                                  The fate of President Obama’s biggest legislative achievement could rest on the shoulders of Supreme Court Justice Anthony Kennedy.

                                                                                                                                     追記:違憲とされた論点は次の2点に集約されます.                         1.the mandate exceeds Congress’ power to regulate interstate commerce, a condition known as the “Commerce Clause.”
2.a law cannot be used to force anyone to obtain health insurance coverage or face a fine. This requirement would not take effect until 2014, should the law ultimately stay in place. 

そして,the healthcare reform law to have “too many moving parts” to separate the constitutional from the unconstitutional. And because the act does not have a severability clause that prevents the entire law from being invalidated if one portion is deemed illegal, “the entire act must be declared void.”  
という判断で,The Affordable Health Care Act 全体が違憲という判決に至ったのです.

  


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Universal Credit:welfare that works① [Social Policy]

イギリスに成立した保守党と自由党の連立政権は,2010年11月に「Universal Credit:welfare that works」と題するWhite paper を発行し,これまでのイギリス福祉国家体制を抜本的に改革しようと提案しています.

白書に先立って,さまざまな情報ルートを使って,かなり広範な情報交換,情報収集が行われ,多数の賛成の反応を得て,白書に纏められたのだそうです

ここでいわれているUniversal は,universality vs selectivity のように福祉対象者について言っているのではなく,これまで積み重ねられてきたさまざまで複雑なBenefits やcredits を統合するという意味で使われています.                                             そこでは,                                                  Department for Work and Pensions benefit                             Housing Benefit from their Local Authority                           Tax Credits from HM Revenue & Customs                             などを指しています.                                                     それらの受給者はダブって給付を受けている場合が多く,その場合,二重三重にmeans test が行われるという行政の無駄,受給者の迷惑が生じているというのです.

これほど情報化社会が進んだ中で,そうした無駄を省くには,benefits,credits を一本化すべきだというのが,1つの狙いです.そして,                                           こうした二重三重の仕組みの複雑さを解消すれば,働ける人が働こうとする意欲を削ぐことになっていた給付システムが統合され,懸念なく就労して,段階的に給付を脱却していくことにつながるというのが究極の狙いといいます.

取りあえず,Universal Credit の概要を説明しましたが,もう少し内容に立ち入った紹介を別の機会に行いたいと思います.

なにしろ法案が2011年1月に議会に提案され,実施は2013年からという予定で,まだまだ細部は変更される可能性がありますから,一気にこの白書を紹介しても早すぎると思うのです.

日本で言えば,厚生労働省旧社会保険庁&Job Centers,地方自治体,財務省国税庁など関連部局を横断的,縦断的に行政改革することになり,縦割り行政の改革の他に,国と地方自治体の行政分担の改革を行って,厚生労働省旧社会保険庁へ集約する訳ですから,日本に置き換えて考えても,なかなかたいへんな行政改革になるといえます.

私の提案した日本の改革では,私は,情報技術を駆使すれば,イギリスが狙っている改革を,事実上,実質的に体現できるのではないかと考えています.

なお,Englandの稼働年齢者の社会扶助種別,家族人員別家族数を示す表(2010,Feb.10現在)を掲示しておきます.Lone parent の比率の高さが顕著です.

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